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本の紹介,「合理的配慮 — 対話を開く、対話が拓く(川島 聡 他,有斐閣)」

合理的配慮 — 対話を開く、対話が拓く
川島 聡 他(著)
難易度:☆☆☆


合理的配慮という言葉をご存知だろうか。
これは障害者権利条約において提唱された概念。
日本は2014年に批准した。
これに対応した障害者差別解消法などが整備され、この中で合理的配慮が義務づけられた。
2016年に障害者差別解消法が施行され、行政機関や事業者に合理的配慮が課されることになったことから、広く知られるようになった。

さて、その合理的配慮。
簡単に説明すると、以下のようなこと。
障害のある人には生活上さまざまな壁が現れることがある。
例えば、目が見えないから案内板を読むことができない、というようなこと。
これを社会的障壁という。
この社会的障壁について、本人が申し出た場合に、やる側の負担が加重でない範囲(合理的)で個別に除去することを合理的配慮という。
これが行政機関等に義務づけられた。
事業者(会社等)は努力義務。

合理的配慮の考え方では、これを差別と規定する。
本書によると差別としては新しい考え方だという。
もともと差別は「等しい者を異なって扱う」時に生じるとされてきた。
しかし、合理的配慮の不提供という差別は「異なる者を等しく扱う」ことによって生じるもので、新しいタイプの差別観。
なるほどなぁ、と思った。
両者とも「人として等しく機会・権利を与えない」ことを差別と捉えることでは共通である。
ただ、新しい差別観は障害者差別以外の問題を考える際に新たな視点を与えてくれる。
このため是非知っておきたい。
マイノリティーの問題はこの考え方で理解・整理できるか。
ちなみに、合理的配慮の考え方自体は宗教上の行為から生じる社会的障壁に端を発しているとのこと。

以上は、合理的配慮について本書の内容を交えながらの説明。
本書は合理的配慮について、基礎・理念を中心にまとめた理論書。
合理的配慮に関する本は障害者差別解消法の施行に伴いたくさん出版された。
その多くは、配慮事例集のような実践本。
この本はそれらの本とは違い、基礎に寄った数少ない理論書。
そして、非常によくまとまった好著である。
HOWに対する具体的な答えは得られないが、WHATやWHYに対する答えはだいたい見つかる。
そんな本である。
現場にいるとHOWを求めがちだが、それだけだと間違いやすい。
ぜひ本書で理屈・理念等の基礎を知ってから、実践をしてほしい。

合理的配慮やその考え方について知りたい全ての人にオススメする本。
差別について考えたい人にも読んでほしい。




横浜かなぁ。



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Update 2019/10/04
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