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本の紹介,「読めなくても、書けなくても、勉強したい ディスレクシアのオレなりの読み書き(井上 智 他,ぶどう社)」

読めなくても、書けなくても、勉強したい ディスレクシアのオレなりの読み書き
井上 智、井上 賞子(著)
難易度:☆


ディスレクシアという障害をご存知だろうか。
世の中には生まれつき読むことが極端に苦手な人たちがいる。
このような障害をディスレクシアという。
特定の学習領域が極端に苦手な障害を学習障害(Learning Disability / Learning Disorder; LD)といい、ディスレクシアはこのお仲間。
ちなみに学習障害の上位概念は発達障害

この本はそんなディスレクシアの当事者が半生を振り返りながら書いた本。
筆者がディスレクシアという言葉と出会ったのは40代中盤。
それまではなぜだかわからないが読めない、転じて、書けない、ということに悩みを抱えながら生きてきた。
ディスレクシアを知り、自分の困難の原因がわかって腑に落ちた。
でも、苦しかった過去は戻ってこない。
なら、せめて、今を生きる同じような子どもたちには理解と支援の中で育ってほしい、という想いからこの本を書いたという。

読み書きができないと学校な中ではしんどい、というのは想像がつく。
ところが、読み書き困難のしんどさは社会に出てからもつきまとう。
差別やいじめ、劣等感。
そこからくる自己防衛的な素行不良。
このようなディスレクシアの困難さを肌で感じることができる本である。
専門がらディスレクシアがなんたるか、ということについては詳しいが、この本には想像を超える苦悩が詰まっていて考えさせられた。

さて。
この本は世の中の多くの人、子ども達に読んでほしいと思っているが、特に読んでほしいのが学校の先生とその卵たち。
特別支援学校の先生ではなく、特に小中高の先生に読んでほしい。
文字が読めないということは、まずは学校の中で困ることになる。
そこで一番のキーとなるのが教員の存在である。
著者が小学生だった当時は昭和40年代。
当時は発達障害学習障害の知識や対応は知られていなかった。
このため、著者への対応も散々で、どんどんこじらせていく。
本来、文字が読めないだけなので、対応次第では国語以外の教科に得意なものがあってしかるべきなのだが、そうはならなかった。
読めない書けないをこじらせ、劣等感が植え付けられ、自己防衛のための行動を獲得し、学びや学校そのものから逃避していく。
登場する教員たちがどんどん著者を追い詰めていく。
よかれと思っての対応が、こんなにも人を追い詰めることがある。
無知の怖さを知ってほしい。
救いは、彼に光をあてる先生が2人いたことか。
このあたりも含め、教職関係者にはかなり示唆に富む内容。
ディスレクシアだけではなく、子どもの「できない」を新たな角度から考えるきっかけとしても使える。

内容はきわめて平易で、中高生から読める。
軽い読み物として2,3時間もあれば読み切れる。
教育関係者はもちろんのこと、全ての大人に読んでほしい一冊。
かなり、おススメです。




羽田空港にて。



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Update 2019/02/25
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