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本の紹介,「大学とは何か(吉見 俊哉,岩波新書)」

大学とは何か
吉見 俊哉(著)
難易度:☆☆☆


大学とは何か。
こう問いかけられた時、さっと答えられるだろうか。
大学を目指す高校生や現役の大学生に問うてみると次のような答えが返ってくる。
専門的な知識を学ぶところ。
これはある意味では正しいが、十分ではない。
少しわかっていると、学問や研究をするところ、なんて答えが返ってくることもある。

では大学教員だとどうか。
最先端の研究を行うとともに、その知識を学生に教えるところ。
学問の方法を学ぶところ。
教養を身につけるところ。
まあ、そんなところだと思う。

なぜそうなのか、という問いだとどうだろう。
例えば、専門的な知識を学ぶ。
なぜ、大学なのか。
専門学校でそれを学ぶのと何が違うのか。
なぜ、研究と専門知識の教授が同居しているのか。
大学で教養教育を行う意義は?
なぜ、教養と専門教育が同居しているのか。
学生はおろか、大学教員であっても答えに窮する人、いるのではないかと思う。

本書はそんな問いを一緒に考えよう、というもの。
記述は大学の歴史がメイン。
中世に始まる大学がいかなる成り立ちをしていたのか。
その後印刷技術の発展によりなぜ衰退したのか。
研究との同居はどうして始まったのか。
こうした問いに対し、大学の歴史をなぞることで迫ることができる。
オクスフォードやケンブリッジといった伝統校も昔は今とはだいぶ違う役割を担っていた。
当たり前のことなのだが、ちゃんと知ることで、僕らが持っている大学像は現代の形であることを再確認できる。
研究が主務であるというのを無批判に受け入れている教員も多いが、あくまで教育が中心で、そこに研究がうまくはまった、というのが正しい理解であるように感じた。
ただ、本書はそれを超えたもっと大きな視点からの大学の役割を考えさせてくれる。

本書は海外の大学の歴史を概説したあと、我が国の大学史についても詳説する。
これがまた、おもしろい。
戦前の帝大・旧制大学がどんなものであったか。
新制大学がどのような理念のもとに出来上がったか。
学生運動がその後の大学政策にどのような影響を及ぼしたか。
現在行われている大学改革の源流はどこにあるのか。
この辺りを詳しく知ることができるのがまたよかった。
わりと大昔に、今の大学が持つ問題点が挙げられているのには驚いた。
これらの歴史を踏まえて、現在の大学やその仕組みを見てみると、今までとは違ったものに見えてくる。

全ての大学教員・大学教員を目指す人におススメな一冊。
これからやってくるであろう大学大変革時代、このくらいのことは知っておきたいもの。

大学とは何か。
考えるのが仕事である当事者の大学教員でも意外と深く考えていないのではないだろうか。
しかし、とても深くて大事な問いだと思う。
もちろん、受験生・学生を含めた全ての人にとっても。




神宮球場にて。



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Update 2018/12/30
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