週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

発表をしよう〜スライド作成編(研究をしよう 臨時版2)

今回はスライド作成のポイントについて。

その前に、論文とスライド発表は何が違うのかわかるだろうか。
両方とも同じ研究を世に広めるための行為なのだが、目的が全然違う。
論文は自身の行った研究について、検証可能な形で公表するのが目的。
だから、細かな方法や結果の記述が大事で、引用した先行研究の書誌情報も完璧に網羅していなければならない。
やった研究と同じことを別の人が試すことが可能な構造でなければならないわけ。
これを主に書きことばに頼って行う。
詳しくは論文とは何かを参考にしていただきたく。

では、スライド発表はどうか。
これは限られた時間で効率よく研究の内容を共有することが目的の行為。
与えられた時間に収まるように、いらない情報をギリギリまでそぎ落とし、研究の要点を伝える。
論文が書きことばという道具をメインで展開するのに対し、スライド発表は視聴覚を駆使して効率よく概要を伝えるのがポイント。
内容(やったことと論理構造)が誤解なく伝わりさえすればよく、論文で求められる検証可能性はいらない。
この違いはしっかり把握した上でスライドを作りたい。

次に、作成時の具体的なポイント。
(1)文字は大きく文は短く
文字はなるべく大きなフォントを使う。
これにより見やすくなると同時に情報量が少なくなる。
文字が小さいということは情報量が多いということ。
長々といろいろなことが書かれており、要点をまとめきれていない可能性がある。
要点をまとめるという余計な作業を聞き手に1つ求めることになり、わかりやすさが一段落ちる。
細々書いておくと発表者は読んで発表できるので安心感はあるのだが、聞き手にとってはつまらないプレゼンになる。
そして、細々書いてあるものを聞き手はたいてい読まない。
プレゼンソフトのデフォルト文字サイズで表現しきるくらいの簡潔さがよい。
いらない情報は思い切ってバッサリ切ろう。

(2)1スライド1メッセージ
学生さんは1つのスライドにいくつも情報を詰め込みがちだが、1つのスライドに込めるメッセージは1つにするのが原則。
このスライドのメッセージは何か、と自問した時に、すっと出てくるようにしておきたい。
スライドの上部にタイトルとして、メッセージを書いておくようにするとよい。
こうすることで、聞き手はこのスライドをメッセージに向けて理解しようとするので、伝わりやすくなる。
メッセージは何か、をしっかり把握しておくと、シンプルなスライドを作れるようになる。

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(1)(2)を適用したスライドの例。これは背景のスライド。
(3)凝らない
研究発表のスライドでは無駄なことはしないのがセオリー。
よって、無意味にアニメーション効果を入れるとかはしない方がよい。
聞き手に理解してもらうためにどうしてもアニメーション効果が必要な場合でも、パッと消す、パッと表示させる、くらいにしておきたい。
ゆっくりフェードインしてくるとか、文字がくるくる回って着地とか、最悪。
笑いをとって場を和ませひきつけるんだ!というような高度なプレゼンテクとかであればまた違うのかもしれないが、そういうのは基本ができた熟練者になってからにしよう。

(4)文字より表、表より図
同じことが伝えられるのであれば、文字より表、表より図を使う。
スライド発表の最大の武器は視覚的に説明が可能なところ。
文字だと1分かかるところが、図だと一瞬でわかる、ということはよくある。
伝えるためにはうまく使いたい。
図表を使った時によくある失敗が、必要な説明が不足しているというもの。
グラフの軸や数字の意味は記載してあるか。
それらの文字の大きさは適切か。
図は直感的にわかってもらうために使うわけだから、そもそも基本的な意味が伝わらないのであれば何の意味もない。
しっかりとチェックしておこう。

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図の悪い使い方の例。軸の数字が小さくて読めず,縦軸の数字の意味も分からない。

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少し良くなった図の例。軸の数字と軸の意味がわかるようになった。

(5)1スライド1分が基本
スライドを作るときの目安として、1スライド1分を基本とするとよい。
与えられた発表時間から逆算して何枚スライド作ればよいかがわかる。
ただ、これはその人の発表スタイルによって大きく変わる。
この数字を基本に自分は1スライドにどれくらいの時間を使うのか、スライド仮作成後に発表練習をしながら自分なりの目安時間を設定するとよい。
ちなみに僕は1スライド20秒くらいでポンポン進めるスタイル。
授業は1スライド2分くらいかけてしゃべるけど。

(6)必要な情報は全部入れる
冒頭にも書いたが、研究発表の目的は内容(やったことと論理構造)を誤解なく伝えることである。
なので、以下の情報は必須になる。
・何をやったのか
・何でやったのか(論理)
・結果は何か
・結果の解釈と結論(論理)
これらの情報に漏れがないか、伝わりづらい点はないか、をチェックする。
論理のからんだ部分(「何でやったのか」「結果の解釈と結論」)は、研究自体がまずいとどうにもならないが、「何をやったのか」「結果は何か」は工夫次第で必ず伝わる。
これが伝わらなければ、聞き手には本当に何も伝わっていない、というのと同義になるので気をつけてほしい。
何度も推敲を重ねて、しっかりとこれらの情報を伝えられるようにしたい。
学生さんの発表を聞いているとこのタイプの発表は時々ある。
この場合、中身に関する具体的な質問が出てこないというさみしいことになる。
何も知らない友だちや家族に説明する気になって、丁寧に作り込んでみると、このタイプの発表は回避できる。
ちなみに、プロの研究者でも非研究者の家族や友人に読んでもらって、伝わりにくいポイントについてコメントをもらってそこを修正する、というのは使われる手法。

まあそんなわけで、スライド作成時の注意点はおしまい。
次は、発表に向けてやること編。





羽田空港にて。


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2019/02/03 19:59
日曜の残りを楽しむ。
鳥取市内にて。


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Update 2019/02/03
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