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本の紹介,「それでも、日本人は「戦争」を選んだ(加藤 陽子(著),新潮文庫)」

それでも、日本人は「戦争」を選んだ
加藤 陽子(著)
難易度:☆☆


この時期には戦争物をいくつか読むようにしている。
で、今年読んだうちのひとつがコイツ。
これが、本当によかった。
今年読んだ本の中で、1番のアタリかもしれない。
そんな本。
著者の加藤陽子さんは近現代史の専門家で、昭和初期の政治や国際情勢に詳しい。
彼女の本は過去にいくつか読んだことあるのだが、この本はその中でも特にによい。

この本では、明治以降日本が経験した5つの戦争について、国際情勢や国内政治などをもとに、なぜ起きたのか、何を得たのかなどを詳説する。
これがとてもおもしろいくて、わかりやすかった。
教科書のような書き方ではない。
まず、日記も含めたさまざまな記録などから事実をひとつひとつおさえる。
場合によってはキーマンの思想にまで迫る。
その上で時間の前後を比較しながら、確からしいものを選んで行く。
そうすると、ああこの戦争はこんな背景でこんな風に突入して行ったんだな、ということがわかる。
そんな感じで展開していく本。
近現代史の歴史研究とはこんな感じで進めるんだろうなぁ、というのがわかる本でもある。
それがまた、すごくおもしろいのだ。

さて。
僕がこの手の本を読むのは、主に以下の3点が知りたいから。
(1)戦後誰もが無謀と認識する、世界を相手にした戦争はどうして起こったのか
(2)開戦時点で指導者はどうやって終わらせる気だったのか
(3)明らかに負けが確定した後の1年弱、なぜ戦争は続いたのか
このうち(1)と(2)については納得できる答えがあった。
戦争を扱った近現代史の一般書は、読み終わったのに結局なんで戦争に至ったのかよくわからないことがあるが、この本ではかなり深い次元で理解することができる。
一つも答えがなかったり、納得できない理由だったりする本も少なくないので、かなりの良書。

この本では序章として、近代史を学ぶ意義が書かれていて、コイツもまたよい。
戦争とは何か。
その根本的な問いに対して基本原理を説いていく。
戦争は敵対する国家の憲法に対する攻撃という形をとる、というルソーの考えや、戦争の犠牲者数が多いと戦後社会が変わる、という考えは、なるほどなと思った。

ちなみに。
この本は歴史好きな高校生相手の講演をまとめたもの。
そのため、語り口調の文体で堅苦しくなくよめる。
時々生徒さんとのやりとりもあって、ここもなかなかのポイント。
理解が深まるのもそうなのだが、
なかなかこの高校生たちがやるのだ。
おお、そんなの答えちゃうか、というようなやりとりが見えて、感心するやら驚くやら。

戦前の歴史は現代に通底している部分もあって、現代社会を考える上でもなかなか勉強になる。
歴史的な視点を持って現代社会をながめるとまた違った何かが見えてくるのだよね。
現代人の教養として、たまにはこういう本もいかがでしょうか。
かなりオススメな1冊デス。




ぼ、ぼく、ネコ太郎です。
ウソです。名前は知りません。
都内某所にて。



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Update 2018/08/20
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