週刊雑記帳(ブログ)

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本の紹介,「カレーライスを一から作る(前田 亜紀(著),ポプラ社)」

カレーライスを一から作る
前田 亜紀(著)
難易度:☆


カレーライスを一から作る
どんなことをイメージするだろうか。
市販のルーを使わず香辛料の配合からゼロベースで作る、というのを思い浮かべる人も多いことと思う。
僕も最初はそう思った。
が、違う。

この本の一からとは、材料も含めて一から、を指す。
じゃがいも、にんじんはもちろん、お米、お肉、食器にいたるまで、すべてを一から作る。
とある大学でそんなゼミがあり、1年かけてカレーを作るだという。
その1年をノンフィクションとしてまとめたのがこの本。
これがすごくおもしろかった。

ただただカレーを作るという、それだけの内容な気がするが、そうではない。
例えば、じゃがいもを作るにしても、複数種類を植える。
なぜか。
化学肥料を使わずに育てるため、成長が思わしくない。
どうするか。
育てていた鶏を食べたくなくなる。
どう考えればよいのか。
取り組みの中から生じるさまざまな問いを通じて、いろいろな事柄の深い理解と思考を促す。
これがおもしろい。
自然を相手にした取り組みが多いので、壁にぶち当たることもしばしば。
その度に学生さん各々が苦悩し工夫し乗り越えていくのがまたおもしろい。
そんな内容。

どんな先生がこんな取り組みをやっているのかと思ったところ、主催している関野吉晴さんは探検家という肩書きだそう。
なるほどな、と思った。
この授業は僕にはできない。
基本的には前にでず、道筋は学生さんに考えさせ、学生さんと一緒に汗をかく。
そんなスタンスで取り組んでいるようで、それが心地よかった。
この本でも本人はほとんどと言っていいほど前に出てこない。
ああ、こういう授業よいな、と思う一方、このタイプの大学教員はどんどん少なくなるんだろうな、とも思った。

学生諸君はじめ、いろいろな人に読んで欲しいと思った一冊。
小学生でも読めるように漢字にはある程度ルビが振ってあるため、幅広い年齢層の人が楽しめる。
ちなみに、書いたのは関野さん本人ではなく、ドキュメンタリー映像の作り手・前田亜紀さん。





夏、ですなぁ。
島根のよさげな和カフェにて。



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Update 2018/07/28
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