週刊雑記帳(ブログ)

担当授業や研究についての情報をメインに記事を書いていきます。月曜日定期更新(臨時休刊もあります)。

谷中研究室で研究したいと考えている人へ

谷中研究室で研究したいと考えている人への案内です。
卒論・修論についてがメインですが,それ以外の人への案内も少し含みます。
一般的な研究室の選び方についてはこちらをご覧ください。

まず,指導可能な研究ですが,
障害,特別支援,心理学,脳科学,発達,
のいずれかのキーワードにかすっていれば大丈夫です。
特別な方法論(装置・設備)としては,脳波・近赤外分光法・視線計測・(MRI)・子どもを観察できる部屋・心理生理実験室があります。
MRIは簡単には使えないので使いたい人は別途ご相談ください。かなりの覚悟がいります。)
上記方法論以外でも、質問紙や観察・面接など特別な装置を使わない研究であれば制限はありません。

僕の専門は脳科学・心理学の実験系の研究がメインで,質問紙を使った調査系の研究も少しします。
ただ,僕の専門はあまり気にしなくていいです。
なぜか。

それは知識面での指導にあまり重きを置いていないからです。
基本的には卒論生には卒論分野については学内で1番詳しくなってもらいます。
僕は知識ではなく,論文の書き方や論の立て方,批判的な思考といった,研究・学問のやり方を指導します。
研究を通じて,研究的な思考・表現を身につけてもらいたいと思っています。
これは卒業後研究を離れてもいろいろな場面ですごく役に立つと思います。

次に指導スタイル。
基本的にはメンバーそれぞれが自発的に研究を行うスタイルをとっています。
こちらからテーマを与えることはありませんので,各自の興味に沿って自分の責任で進めてもらいます。
自由です。
自由ゆえの苦しさはあると思います。
僕の指導方針・スタイルだと卒論生4人くらいまでなら可能かなー、と思っています。

研究室に所属するにはいくつかの方法があります。
正式なものとしては鳥取大学・地域学部で3年次に特別支援教育コースに所属,4年次で研究室配属となるものです。
3年次は違うコースに所属していたけど,4年次で変わりたいということも場合によってはできます。
他大や他学部・他学科の学生さんは指導教員に相談して指導委託という形で研究することもできるかもしれません。
これはケースバイケースですので相談してください。
院生の場合は事前にコンタクト取っていただいた上で,院試を受験をしてください。
また,うちの学部・コースですと地域調査プロジェクトという授業がありますので,僕のをとるとお試し卒論体験ができます。
ただ、大変です。

また,正式ではないが研究や勉強したい,という人については正課の教育に支障が出ない範囲で受け入れます。
例えば,まだ2,3年生だけどもう研究したい,などという場合がこれに当てはまります。
就活や教採対策で4年次だけで研究をやろうとすると確かに大変ですので,早めに着手するのはオススメです。
ご相談ください。
早くに着手すると研究のクオリティーは上がりますので,
学会発表や学会誌等への投稿論文発表ができるかもしれません。
卒論生でも学会発表する人は結構います。

あとは,院への進学を考えている人。
進学先の大学院で行う研究に近い分野の教員が学部内にいる場合はそちらで卒論を書くことをオススメします。
いない場合,もしくはどうしてもうちの研究室がよい場合は進学後の研究を見据えて研究を進めていくことになります。
可能な範囲で進学後の所属研究室の教員に研究のアドバイスをもらうといったことも考えられます。
この場合は4年からでは間に合わない可能性がありますので,早めに着手したほうがよいかと思います。
早めにご相談ください。

以上研究案内でした。
参考になれば幸い。



これまでの主な卒論・修論の指導テーマ。
「ほめの効果がない状況における自尊感情の影響」
「聴取場面におけるイメージ鮮明性と描画方略の関係」
「「ずるい」の構成概念と生起要因と消失要因の研究」
「漢字の再生における空書行動の出現と効果」
「児童発達支援に携わる上での職員の困難感と経験年数の関連性について」
学童保育における指導員の発達障害児に関する専門性と困難感の関連」
「日本語を第一言語とする英語学習者の英文読解においてトップダウン処理がボトムアップ処理に及ぼす影響について」
「通常学級の担任教員が各関係機関との連携に対して抱く困難感について」
自閉症スペクトラム障害児をもつ親の夫婦関係と抑うつ感の関連」
「通級指導教室に通う子どもをもつ親の支援ニーズと特性の受け入れ方の検討」
「大学生の注意欠如・多動症者の攻撃性に対する自尊感情の媒介効果の検討」
「知的障害児者に関する余暇研究の余暇の偏りの質的検討」
発達障害特性をもつキャラクターに対して大人と子どもそれぞれが抱く印象」
てんかんに関する知識とてんかんを持つ人への雇用意識の関係」
「選択的注意と抑制機能の関係」

2023年度は鋭意テーマ選定中。



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卒論指導教員(研究室)の選び方 No.4 その他もろもろと決め方

このシリーズもいよいよ最終回。

前回までに決め方の3つのポイントを書きました。
これに加えて重要な点があります。
それは所属学生数。
いくら3つのポイントがパーフェクトでも,
人数が多すぎる場合はうまくいかないことがあります。

研究室の体制(教員が1人でやっているのか,複数教員で運営しているのか,教えてくれる院生がいるのか)や指導スタイルにもよりますが,
研究指導ということになると,僕の場合だと,卒論生は4人ぐらいが限界ではないかと思っています。
院生や研究員,助教等のスタッフがいると指導可能な学生数は増えます。
ですので,希望者の人数を見てあまりにも多い場合で,
他に候補になる教員がいる場合はそちらにすることも考えたほうがよいでしょう。
卒論は大作になりますので,見る側もだいぶ時間をとられます。
それが同時にたくさん進行し,しかも見てほしい時期(発表前や提出前)もだいたい同じ。
そうするとあまり人数が多い場合にはじっくりと見てもらえないことになります。
時間は有限ですのでこれは仕方のない現象ですね。
ちなみに,知り合いの大学教員は卒論提出〆切日の1日前に6人から一気に卒論が送られてきた,と言っていました。
その教員は徹夜で読んでコメントをしてあげたそうですが,
人数が多すぎるとこういうことが日常起こることになります。

これらのことを踏まえながら,
自分の目的・重視するポイントを考えて決めていくことになります。
例えば,研究者になるために大学院に行きたくて分野も大体決まっている,ということになれば,
論文の質が高まることを重要視して決めることになります。
就職するのであれば希望する職種と関連したテーマを選ぶのもよいですし,
純粋な興味で学問としての研究を楽しんでみるというのもよいと思います。
就職組の学生さんと話をすると前者が非常に多いのですが,
研究を楽しむというのは大学時代しかできないことですので,
後者のスタイルで選んでみるのも悪くないと思います。
人生のある局面でひょんなことからつながったり役に立ったりすることもあります。
仕事に関連した勉強は就職してからずーっと続くことですので,
あえて大学でそこを選ばなくてもよいのではないか,というのが私見です。

以上,卒論指導教員(研究室)の選び方でした。
参考になれば幸い。



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卒論指導教員(研究室)の選び方 No.3 教員との相性

このシリーズも3回目。

3つ目は教員との相性です。
前回までに書いた専門性や指導スタイルも広い意味では相性と考えることもできるかもしれませんが,
ここでいう相性は早い話が好きかそうでないか,です。

そんなんで卒論指導教員を決めていいのか,という意見も聞こえてきそうですが,
僕はいいと思っています。
なぜか。
1年から2年,結構密にやり取りすることになるので,
やはり人物的に相性が合わないとなるとキツいです。
特に合わない場合は研究の進行に影響してしまうかもしれません。
専門性や指導スタイルと天秤にかけながら,
この点も考えながら選ぶというのがよいように思います。

もうひとつ,相性が大事な理由があります。
大学の教員との関係が卒業研究に限られるのであれば,
好き嫌い的な相性はさほど重要ではないのですが,
それ以外のことで役に立つ場合があります。
例えば,就活や将来のことなどの相談にのってもらえることがあります。
研究以外の学問や本の話を楽しむといったことができる場合もあります。
卒業後困った時にアドバイスがもらえるかもしれません。
場合によってはそういう関係が一生ものになる場合もあります。
こういう研究以外の関係となると教員との相性がだいぶ効いてきます。

相性に関しては授業やら話にいった感じやら,
普段の印象を直感で判断するしかないとおもいます。
これを読んでいる人がまだ2年生以下でしたら,
今のうちからいろいろな先生のところに遊びに行ってみるといいと思います。
ただ遊びに行くのは気がひける場合は,
質問を口実に押しかけてみるのをお勧めします。
その時に進路や卒論の話をしてみると結構話をしてくれると思います。

卒論指導教員(研究室)の選び方 No.4(最終回)へ続く



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卒論指導教員(研究室)の選び方 No.2教員の指導スタイル

前回の続き。

教員の専門性と並んで大事なのは,教員の卒論の指導スタイルです。
これは各教員かなり異なります。
大きくは卒論のテーマ設定に関するものと,日常の指導スタイルがあります。

まずは,テーマ設定についてのスタイル。
学生さんが研究テーマを設定する際,自由度が高い教員と低い教員がいます。
教員の専門性を踏まえて,どこまで自由にやらせてくれるか,ということです。
自由度の高い方がよいような気もしますが,
これは,どちらがよいというものではなく,完全に学生さんの好みになります。

あまり自由度が高いとテーマ設定に悩む場合もあります。
やりたいことはできますが,それなりに大変ですし,
調査などが十分でないと研究の質が下がることもよくあります。
逆にテーマ設定の自由度が低いとやりたいことができないということになります。
ただし,下調べ等は指導教員の側でしっかりしてありますので,ある程度研究の質が担保されます。
前者は研究の質は下がるかもしれませんが,研究のやり方全般を学ぶことができます。
後者はうまくいくと学会発表は学術論文として出版できるかもしれません。
学生さんが何を重視するかによって,どちらがよいかは変わりますね。

さて,次に教員の日常の指導スタイルです。
野放しタイプ,みっちり指導タイプなど様々なタイプがあります。
野放しタイプですと自由にやらせてもらえますが,
気づいたら卒論提出間際なのに何もできていない!なんてことになることがあります。
自由と表裏一体の関係ですね。
教員の自体が忙しすぎてあまり構ってもらえない,なんてこともあります。
逆にみっちり指導タイプですと,密にいろいろと教えてもらえます。
専門的な知識も身につきますし,大きく進度が遅れることも少ないでしょう。
ただ,自由に進めたいタイプの学生さんには少し息苦しいかもしれません。
自分でじっくり考える経験が乏しくなる可能性もあります。
これもどのスタイルがよいかは学生さんタイプよるところが大きいです。
これらの点については後述する「相性」の一部ということもできるかもしれません。

さあ,では一体どうやって教員の指導スタイルを知るか。
まずは本人に聞いてみるのがよいでしょう。
また,卒業生の論文のテーマを眺めてみるのもひとつです。
テーマ設定の範囲が広いか,教員の研究テーマに即しているのかがわかります。
もうひとつは所属している先輩に聞いてみることです。
これらをやるとだいたいその教員の指導スタイルはわかります。

卒論指導教員(研究室)の選び方 No.3へ続く



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卒論指導教員(研究室)の選び方 No.1 専門性

時々学生さんに聞かれるので記事にしました。
うちは地方国立の教育学部系で、教員一人一人が個人商店のように独立した研究室を持つタイプの組織。
医学部や工学部のように教授を頂点とした大人数の研究室型の組織には当てはまらないかもしれませんが、共通しているところもいくらかあると思いますので参考にしてください。

さて、選び方。
教員を見る大きなポイントは以下の3つでしょうか。
①教員の専門性
②教員の指導スタイル
③教員との相性
これらのポイントをそれぞれ説明していきます。

まずは教員の専門性。
当然ながら大学の教員には専門分野があります。
これは学生さんが考えているよりもだいぶ狭いものです。
例えば僕の場合は心理学・脳科学ですが、実際に論文を書いたりしている研究分野はその中のごく一部です。
心理学の100ページの教科書があるとすれば、その中でど専門に当たるページは1ページあるかないか、と言えば、どのくらい一部なのかわかってもらえると思います。
その教員のど専門の分野を知りたい場合は、CiNiiPubMedあたりでその教員の名前で検索をかければ論文が出てくるので、
タイトルを眺めてみたり、さっと読んでみたりするとわかります。
直接聞きに行ってみるというのもよいでしょう。

では、卒論を書くときにその教員の専門分野と自分のテーマが必ず重なっていなければならないかというと、そんなことはありません。
博士課程の大学院生でも指導教員とど専門がずれているということはあります。
まあ学部レベルだとずれている方が多いでしょう。

それでは専門分野が重なっているとどんないいことがあるか、ですが、
指導教員は専門分野であればあるほど最新の知見(論文、学会発表、その分野で世界中で誰がどんな研究をしているか等)を知っています。
方法論についても実際に使っていますのでマニアックに詳しいです。
ですので、専門分野に近ければ近いほど知識面で高度な指導を受けられます。
教員によっては自分が研究するテーマの中から学生さんが出来そうなものを割り振ってくれる場合もあります。
これをよしとするかは好みの問題でしょうか。

一方で教員の専門分野から自分のテーマからずれてくると指導してもらえないのではないかと思う方もいると思います。
これは大丈夫な場合が多いです。
教員が論文を書いているど専門の分野でなくとも,方法論は共通のことが多いですし,ロジックや論の立て方という意味では広く様々な学問分野で共通しています。
この場合は,論文の読み方や,方法論,論文の書き方等を指導してもらうことになります。
そもそも卒論のレベルでも研究をするにあたってはその分野の知識を自分で調べてインプットすることが求められます。
自分の卒論の非常に狭い専門分野については,指導教員よりも知識があるというのはふつうのことですので,自分のやりたい研究について指導教員がど専門である必要はないのです。
心理学の教員のもとで数学を研究する,など,あまりにもかけ離れている場合は無理なこともありますが,方法論が共通している場合はある程度分野が離れていても指導してもらえることがあります。
その教員の所属分野・学科・担当授業から考えていたものと研究分野・指導可能分野が違っていたり,考えてもいなかった教員が担当可能だったりすることもあります。
この辺りは後述する教員の指導スタイルにもよりますので,直接訪ねて行って聞いてみるのがよいでしょう。

卒論指導教員(研究室)の選び方 No.2へつづく



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トットリヒトハコでのタイトル一覧

トットリヒトハコでのタイトル一覧

今回はテーマ「歴史と物語」
物語を中心に,幅広く並べています。
関係ない本もたくさんいます。
これない学生さんで気になる本がある人は「どんな本ですかー?」と聞きに来てください。



テーマ・メイン本

竜馬がゆく ,司馬遼太郎(著)
おーい!竜馬 ,武田 鉄矢(著)



テーマ物語本

国盗り物語 ,司馬 遼太郎(著)
関ヶ原 ,司馬 遼太郎(著)
功名が辻 ,司馬 遼太郎(著)
真田太平記 ,池波 正太郎(著)
伊達政宗 ,山岡 荘八(著)

二都物語 ,チャールズ ディケンズ(著)

燃えよ剣 ,司馬 遼太郎(著)
世に棲む日日 ,司馬 遼太郎(著)
 ,司馬 遼太郎(著)

坂の上の雲 ,司馬 遼太郎(著)

零戦 ,堀越 二郎(著)
落日燃ゆ ,城山 三郎(著)
山本五十六 ,阿川 弘之(著)
指揮官たちの特攻 ,城山 三郎(著)
二つの祖国 ,山崎 豊子(著)
決定版 日本のいちばん長い日 ,半藤 一利(著)

白洲次郎 占領を背負った男 ,北 康利(著)
不毛地帯 ,山崎 豊子(著)
大地の子 ,山崎 豊子(著)
官僚たちの夏 ,城山 三郎(著)



関連ノンフィクション本

NHKさかのぼり日本史 ,五百旗頭真 他(著)
シリーズ日本近現代史 ,井上 勝生 他(著)
日本の近代シリーズ ,松本 健一 他(著)

面白いほどよくわかる太平洋戦争 ,太平洋戦争研究会(著)
東京裁判 ,児島 襄(著)
この社会で戦う君に「知の世界地図」をあげよう ,池上彰(著)

新版・完全 「東海道五十三次」 ガイド  ,東海道ネットワークの会(著)
岩波新書で「戦後」をよむ ,小森 陽一(著)



その他本

沈まぬ太陽 ,山崎 豊子(著)
クライマーズ・ハイ ,横山 秀夫(著)

ズッコケ中年三人組 ,那須 正幹(著)
阪急電車 ,有川 浩(著)
とんび ,重松 清(著)
まほろ駅前多田便利軒 ,三浦 しをん(著)
間宮兄弟 ,江國 香織(著)

ぼくはこんな本を読んできた ,立花 隆(著)



本の紹介,「脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ(大隅 典子(著),講談社ブルーバックス)」

脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ(大隅 典子(著),講談社ブルーバックス)
大隅 典子(著)
難易度:☆☆


この仕事をしていると、
発達障害について学びたいのだが何かよい本はないか」と聞かれることがよくある。
発達障害については注目されているせいであろう、扱う書籍はわりと多い。
なので、それらの中からその人にあった本を選んで紹介するようにしているのだが、
そのうち少し困るケースが出てきた。
初学者・一般向けの本はわりとある。
当事者手記のような本もいくらかある。
が、少し勉強してもう少し先へ行こうとしている人に紹介できる本が少ないのだ。
一般向けの簡単な本の次は、ぐんと難しい專門的な内容になってしまう。
これが障害の背景にある脳や遺伝の話になるといよいよ難易度が上がり、もう、どうにもこうにも。
そんな中で、この本は発達障害のひとつである自閉症について簡単すぎず難しすぎず、絶妙なバランスで書かれた好著。
一般向け書の内容は大体わかっているが、医学的な専門書はちと難しい。
そういう人にオススメできる数少ない本である。

著者の大隈さんは発生の脳研究者。
発生とは受精卵が細胞分裂を繰り返し成体に変化していく過程のことで、そこには遺伝的な話も絡む。
この本では脳とその発生の基本的なこと、遺伝の基本的なことを解説しながら、それらと自閉症とのつながりを解く。
内容は平易でわかりやすく、必要なことがコンパクトにまとめられており読みやすい。
この分野を初めて読む人でもそれなりに理解ができると思う。
自閉症についてはその特性や支援の方法を扱った本は多いが、この本にはそれらの内容は薄い。
代わりにその背後にある自閉症の「なぜ」に迫ることができる内容になっている。
本書の対象は自閉症に絞ってあるが、他の発達障害を含めた遺伝的・先天的な脳性疾患全般の理解にも役に立つ。

自閉症発達障害について簡単なことは知っており、障害のメカニズムや基礎知識を知りたい人にオススメ。
現場の教員や教員を目指している人にぜひ読んでほしい1冊。



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Update 2017/12/15
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